はじめに
南信州(飯田・下伊那地域)は、豊かでありながら時には厳しい自然環境のもと、古より各地の多様な生活文化を尊重しながらも、お互いに繋がりをもって一体として発展してきました。
その風土や人々の日常生活に根ざす形で、神楽や盆踊り、人形芝居や農村歌舞伎、獅子舞などの多様な民俗芸能が独自の文化として各地で育まれ、先人から脈々と受け継がれてきました。貴重な民俗芸能が今も多く点在するが故に、南信州は「民俗芸能の宝庫」と呼ばれています。
多様性ある風土と生活文化の上に息づき継承されてきたこれらの民俗芸能は、わが国の農山村文化の原点ともいえ、三遠南信自動車道やリニア中央新幹線の開通をも見据える中で、南信州の“誇り”として将来にわたって、守り、活かすべき貴重な資産です。
また、これら民俗芸能は単なる芸能である以上に、それを継承すること自体がコミュニティの健全な存続を実現してきたという側面もあり、持続可能な地域となるための重要な役割も担っています。
ところが現状は、社会意識や生活環境の変化、少子高齢・人口減少社会の到来により、中山間地におけるコミュニティの弱体化が危惧されており、これら地域に根ざす民俗芸能も後継者の減少や不在から、存続の危機にさらされています。各自治体が、人口減少を緩やかにするための様々な取組を進めていますが、その減少を食い止めるのは容易ではありません。
このような現状の下、後継者の育成と未来への継承のために地域を挙げた取組みを強力に推進するため、南信州の民俗芸能の継承団体、県、市町村、広域連合が手を取り合い、去る平成27年7月1日、「南信州民俗芸能継承推進協議会」を設立しました。以降、推進組織である民俗芸能継承推進委員会で地域全体が推進すべき取組の方向性を検討し、このたび「南信州における民俗芸能継承のための取組方針」として取りまとめました。
この方針に基づき各種取組が協議会はもとより各地区等において積極的に実践され、民俗芸能とそこに育まれる地域の“誇りと活力”が受け継がれて初めて、持続可能な地域が実現するものと確信するものです。
南信州民俗芸能継承推進協議会 会長 片 桐 登
(平成28年2月)
南信州における民俗芸能継承のための取組方針 ~南信州の貴重な資産を未来に継承するために~